GA4ではユニバーサルアナリティクス(UA)と比べて標準レポートが少ないため、詳細なユーザー行動分析をおこないたい場合は「探索レポート」の活用が欠かせません。
探索レポートを活用することで、必要なデータを柔軟に抽出し、WEBサイトの課題を的確に分析できるため、WEBマーケティング業務において強力な武器となります。本記事では、GA4の探索レポートの基本からレポートの作成方法、作成時の注意点まで詳しく解説します。
探索レポートでは「何を分析するのか」「どのような表やグラフが必要なのか」を事前に計画する必要があるため、基本レポートに比べて作成のハードルはやや高めです。しかし、一度使いこなせるようになれば、ユーザーの行動をより深く理解し、効果的な施策を立案するのに役立ちます。この機会にぜひ身につけていきましょう。
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GA4の「探索レポート」の特徴
GA4の探索レポートは、ユーザーが自由に指標やディメンションを組み合わせて独自のレポートを作成できる機能です。
主な特徴は以下の3つです。
- ドラッグ&ドロップで指標やディメンションを設定でき、操作性に優れている
- 複数のテンプレートが用意されており、用途に応じてレポートを作成できる
- 柔軟性が高く、グラフや表など見せ方を自由にカスタマイズできる
GA4の探索レポートを活用すると、ユーザーの行動経路やパフォーマンスなど、必要なデータを絞り込んでWEBサイトの分析が可能になります。
関連記事:Googleアナリティクス(GA4)で月別・日別のデータ集計方法と探索レポートを紹介
GA4の探索テンプレート
GA4の探索レポートには、以下7種類のテンプレートが用意されています。
- 自由形式
- ファネルデータ探索
- 経路データ探索
- セグメントの重複
- コホートデータ探索
- ユーザーのライフタイム
- ユーザーエクスプローラ
それぞれの特徴を理解し使い分けていきましょう。
自由形式
自由形式は、探索レポートでよく利用されるテンプレートです。標準レポートでは用意されていない国別、年齢別、時間別などのデータも確認が可能です。
左のメニューから「探索」するとデータ検索の画面になるので、「自由形式」を選択。指標やディメンションを組み合わせて表やグラフを作成できます。
グラフではドーナツグラフ、折れ線グラフ、散布図、棒グラフ、地図が用意されています。
以下でそれぞれの見せ方と特徴を紹介していきます。
テーブル
「ビジュアリゼーション」で「テーブル」を選択すると下図のような表形式のレポートが作成できます。ディメンションを表の行や列を自由に組み替えたり、指標を複数並べて比較できる柔軟性の高い機能です。
ドーナツグラフ
「ビジュアリゼーション」から「ドーナツグラフ」を選択すると以下のようなグラフが表示されます。全体に占める割合などを確認するときに適しています。下の例は利用者ユーザー数と年齢のグラフに男性と女性のセグメントをかけて性別毎の年齢割合を表示したレポートです。
折れ線グラフ
「ビジュアリゼーション」から「折れ線グラフ」を選択すると以下図のようなグラフが表示されます。時系列に沿ってどのように変化しているか、大まかな傾向をつかむのに適しています。時系列の粒度は時間・日・週・月から選択できます。折れ線グラフには「異常検出」機能があり、折れ線グラフを使ってデータの外れ値を特定できます(GA4で時間単位のデータを見る場合は折線グラフのみ可能)。
散布図
「ビジュアリゼーション」から「散布図」を選択すると、以下のようなグラフが表示されます。縦軸と横軸のそれぞれの要素に相関関係があるのかを確認するときに適しています。
棒グラフ
「ビジュアリゼーション」から「棒グラフ」を選択すると以下のようなグラフが表示されます。主にデータの大きさを比較するときに使用します。部門別の売上や商品毎の売上など、連続性のないデータを比較する場合に適しています。
地図
「ビジュアリゼーション」から「地図」を選択すると以下のようなグラフが表示されます。地図上に数量を円で表したグラフで円の大きさで傾向を把握できます。地域の内訳では大陸・亜大陸・国・地域・市区町村が用意されています。地域別に数値を見たいときに適しています。
ファネルデータ探索(旧:目標到達プロセス)
ファネルデータ探索は、ユーザーがコンバージョンに至るまでの行動経路を可視化できるテンプレートです。
商品購入や資料請求など指定したページやイベントの通過数と通過率が表示できるため、目標達成までの改善点を把握するのに役立ちます。
経路データ探索
経路データ探索は、WEBサイト内でのユーザーの動きをツリーグラフで確認できるテンプレートです。
ユーザーの動きは始点、終点から調べることができ、WEBサイトに入ってきてから離脱するまでの一連の動きを把握でき、ユーザーエンゲージメントの改善に役立てることができます。
セグメントなどを活用するとより詳細な分析も可能です。
セグメントの重複
セグメントの重複は、国や年齢、デバイスなど最大3つのセグメントを比較し、重複するユーザーのボリュームや状況を確認できるテンプレートです。
上の図では「デスクトップユーザー」、「モバイルユーザー」、「ニュース登録者」のセグメントを重ねています。この3つのセグメントを満たすユーザーの数を確認でき、優良顧客を発見できます。さらに新しいセグメントを作成しオーディエンスとして広告に使うことも可能です。
コホートデータ探索
コホートデータ探索では、同じ属性を持つユーザーをグループ化し、ユーザーのアクションを分析できるテンプレートです。ユーザーのリピート率を確認できる点が特徴です。
例えば「先月新規で訪れたユーザーの内何人が今月戻ってきたか」「サイトに初めてアクセスした日時によってユーザーの行動に違いがあるか」などが確認できます。
ユーザーのライフタイム
ユーザーのライフタイムは、ユーザーの行動を分析してどの程度ビジネスに貢献しているか(LTV)を分析できるテンプレートです。
参照元、メディアをかけ合わせると最も高いLTVが出ている参照元を特定できます。
また、自然検索とリスティング広告それぞれから流入したユーザーを比較し、どちらの再訪問率や購入率が高いかを分析することも可能です。
リピート顧客を増やし、コンバージョン率を向上させるための戦略立案に役立ちます。
ユーザーエクスプローラ
ユーザーエクスプローラは、特定ユーザーの行動を初訪問から現在まで時系列で確認できるテンプレートです。
例えば「何時何分にコンバージョンしたユーザーがどのような順番でどのページを見たか」「どういったアクションをおこなってどの商品を購入したか」などを確認できます。コンバージョンに貢献している要素を洗い出すことに適しています。
探索レポートの作り方
探索レポートの作成は以下の手順でおこないます。
- レポートの手法を選択する
- ディメンション、指標、セグメントを変数に追加する
- タブの設定にデータを追加する
- 探索する期間を調整する
- データの共有、エクスポートも可能
今回は空白(新しいデータ探索を作成)から自由形式のレポートを作成する方法について、以下で詳しく解説していきます。
1.レポートの手法を選択する
左メニューの探索アイコンをクリックし「空白(+アイコン)」をクリックします。画面が切り替わり下の図のようになるので、タブの設定が「自由形式」になっていることを確認します。※自由形式がデフォルトで設定されています。
2.ディメンション、指標、セグメントを変数に追加する
ディメンション、指標、セグメント各エリアの右上にあるプラスマークをクリックし目的の値を追加します。
3.タブの設定にデータを追加する
タブ設定にそれぞれの項目をドラッグ&ドロップすると右側にレポートが表示されます。
4.探索する期間を調整する
変数の上部で現在選択されている期間をクリックすると下図のようなカレンダーが表示されます。任意の期間を指定し適用をクリックします。
5.データの共有、エクスポートも可能
作成したレポートは右上のアイコンからデータの共有とエクスポートが可能です。データのエクスポートはGoogleスプレットシート、TSV、CSV、PDF、PDF(すべてのタブ)で選択が可能です。
探索レポートを活用する際の注意点
レポートを作成してもデータが正確に反映されていなければ、正しいデータ分析は行えません。
ここでは、探索レポートを使ううえで押さえておくべき注意点を3つ解説します。
- データ保持期間の制限
- 「しきい値」とサンプリングの影響
- レポート共有の制限
それぞれ以下で解説します。
データ保持期間の制限
データ探索の保持期間はデフォルトで2ヵ月に設定されていますが、最大14ヵ月まで延長可能です。ただし、保持期間を過ぎるとデータが確認できなくなるため、設定時に「14ヵ月」へ変更しておくのがおすすめです。
また14ヵ月を超えたデータを確認する必要がある場合は、事前にエクスポートが必要になります。しかし、都度エクスポートする必要があるため、作業に手間がかかるうえ、データをエクスポートしただけではデータ分析に適しているといえません。BigQueryなどのデータウェアハウスを利用すれば長期的なデータ保存や分析が可能ですが、専門的な知識が求められます。
そのため、長期的なトレンド分析を目的とする場合、GA4のデータ探索だけでは十分でない場合があるかもしれません。
「しきい値」と「サンプリング」の影響
GA4のレポートでは、「しきい値」が適用される場合があり、データ分析の際には注意が必要です。「しきい値」とは、個別のユーザーが特定されないようにする仕組みで、一定の基準を下回るデータがレポートから除外されるようになっています。
しきい値が適用されることで一部のデータが欠けると、分析結果の精度が低下する可能性があります。
また、探索レポートで大量のデータを使用する際に「サンプリング」が発生する場合があります。サンプリングは、集計に必要なイベント数が一定の上限を超えた場合に適用される仕組みです。上限を超えた場合、全データの中から代表的なサンプルが選ばれ、そのサンプルを基にレポートが作成されます。
しきい値やサンプリングの影響によりマーケティング施策の評価が正確におこなえないリスクが生じる可能性があるため注意が必要です。
レポート共有の制限
作成した探索レポートは、権限を持つユーザーにしか共有できません。
探索レポートを他の人が編集する場合には、作成者がレポートの共有設定を有効にしたうえで、共有された側がレポートを複製する必要があります。
複製したレポートは、複製者した本人のみが編集可能で、1つのレポートを複数人でリアルタイムに共同編集するのには適していません。
探索レポートは、あくまでも担当者がデータを深く掘り下げることに特化したレポート機能というわけです。
Looker Studio(旧データポータル)との連携も便利
GA4のレポート作成では、Looker Studioとの連携もおすすめです。
Googleが提供するBIツール(ビジネスインテリジェンスツール)で、無料で利用できます。連携することで、定期レポートやデータ集計、モニタリングの自動化に役立ちます。
このほか、過去データを無制限に扱えることや、サンプリングのない精度の高いデータが利用できる点、一度作成したレポートが自動で更新される点などがメリットです。また、800種類以上のコネクタを通じて、さまざまなデータソースと簡単に連携できます。
GA4との連携方法は、以下の手順です。
- Looker Studioを開き、ホーム画面の「作成」から「データソース」を選択
- コネクタ一覧より「Googleアナリティクス(GA4)」を選択
- Googleアナリティクスのアカウントへアクセス権を許可するためのポップアップが表示されたら「承認」をクリック
- アカウントを選択し、連携させたいGA4のプロパティを選択
- 右上の「接続」をクリック
接続をクリックするとGA4のデータのディメンションと指標が表示されます。右上の「レポートを作成」をクリックすると、新規のレポート画面が表示されます。
まとめ
GA4の探索レポートは、柔軟なデータ分析を可能にする便利な機能です。テンプレートを活用することで、ユーザー行動の可視化や成果改善のヒントが得られます。
「自由形式」や「ファネルデータ探索」など、用途に応じたテンプレートを使い分けることで、効率的に分析が進められます。
ただし、データ保持期間やしきい値の影響といった制約もあるため、注意点を押さえておくことが重要です。さらに、Looker Studioとの連携を活用すれば、分析の幅を広げることが可能です。
GA4探索レポートを使いこなして、効果的なマーケティング施策につなげましょう。