Googleアナリティクスで検索クエリを確認していると、「not provided」という表示を見ることが多くなってきました。自社サイトへのアクセスを増やしたいと考えているWEBマーケティング担当者にとって、流入キーワードがわからないことは由々しき問題です。
そこで、この記事では、そもそもnot providedとは何なのか、また、not providedの中身を知るための方法などについて説明します。
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目次
not providedとは?
not providedとは、日本語に直訳すると「提供されていない」という意味になります。これは、どのようなキーワードでサイトにアクセスしてきたのかという情報が、Googleアナリティクスに提供されていないということです。言い換えれば、not providedは「検索キーワードが不明である」ということを意味します。このnot providedは、2011年頃から現れ始め、2013年以降には加速度的に増えていきました。
なぜnot providedが増えたのか?
not providedが増えた理由は、インターネットでセキュリティやプライバシーを保護する意識が高まってきたからです。元々、クレジットカード番号のような高度に秘匿性の高い情報のセキュリティ保護は重視されていました。しかし、時代が進むにつれ他の個人情報保護の必要性まで意識されるようになり、ついには検索ワードまで安易に知られるべきではないという考えが普及するにいたっています。このようにインターネットの情報セキュリティ重視の流れがnot providedを増やしているのです。
SSLについて
not providedが増えたことは、SSL技術が広く普及したことと深く関係しています。SSLとは、インターネット上での情報セキュリティを保護する技術の一つです。Secure Socket Layerの略で、インターネット上でデータを暗号化して通信します。SSLは、通信内容を暗号化するため、クレジットカード情報など秘匿性の高い情報を送る際には必須の技術です。また、通信データの改ざん検知もできます。さらに、電子証明書によって通信相手が本当に意図した本人なのかどうかを確認できるため、なりすましによる被害も防ぐことができる有用な技術です。
SSLを使ったサイト上で入力した情報は暗号化されるため、例えば問い合わせフォームに入力した個人情報を途中で読み取られる心配がありません。そして、サイトがSSLを使用しているかどうかはアドレスの先頭を見ればわかります。SSLを使っていないサイトはhttp://で始まりますが、SSLを使ったサイトはhttps://で始まるので一目瞭然です。それだけでなく、SSLを使ったサイトに接続すると、WEBブラウザのアドレスバーに鍵のマークが表示されます。
SSLを使用したサイトが増えていくにつれて、サイト内でのユーザーの行動を把握することが難しくなっていきました。これはサイトへのアクセス増加を目指すWEB担当者からすれば厄介な事態ですが、一般のユーザーにとってはよいことです。SSLの普及によって多くのユーザーは以前よりも安心してインターネットを使うことができるようになりました。
検索エンジンのSSL化によるnot providedの変化
セキュリティ意識の高まりもあってSSLを使用したサイトは徐々に増えていきましたが、この流れを加速させたのは検索エンジンのSSL対応です。Google検索は2011年にSSL化を開始し、2013年には完全にSSL化を完了しました。Googleが他のすべてのサービスも含めSSL化を完了したのが2014年です。これに追随するようにYahoo!検索も2015年からSSL化を開始。2017年までにはYahoo!JAPANのすべてのサイトをSSL化しました。
また、2014年にはGoogleがSSLを検索順位決定の重要な指標にすることを宣言しました。HTTPS化されていないサイトは検索順位を下げられ、WEBブラウザのGoogle Chromeでは、HTTPS化されていないページは「安全ではありません」と表示されるなど、GoogleはSSLの使用を広く推奨するようになります。「HTTPS everywhere」の考えの下で、インターネット全体にSSL技術を浸透させようとしていったのです。
検索エンジンがSSL化されるということは、ユーザーの検索キーワードも暗号化されることを意味します。これによって、Googleアナリティクスのようなアクセス解析ツールをもってしても検索ワードを知ることはできなくなってしまったのです。事実、GoogleがサービスのすべてをSSL化した2014年には、Googleアナリティクスで検索クエリを確認した際のnot providedの割合は90%を超えるようになっていました。
not providedの中身がわかることのメリット
SSL化によって激増したnot providedですが、セキュリティ強化の結果なのだから仕方ないと考えていてよいのでしょうか。放置しないでnot providedの中身を知る努力をすれば、サイトへのアクセスを増やす施策をおこなうことができるかもしれません。そこで、not providedの中身を知ることにはどのようなメリットがあるのか、SEOの観点で説明していきましょう。
1.どのような検索キーワードでサイト流入しているかがわかる
not providedの中身を知ることができれば、ユーザーがどのような検索キーワードでサイトにアクセスしてきているのかがわかります。狙った通りのキーワードでアクセスしているのか、それともまったく違うキーワードでアクセスしてきているのかなど、当初の目論見とのズレを確認することができるのです。これは、SEOをおこなっていくうえで基本的な情報です。狙い通りのキーワードで十分なアクセスがあるのであればサイト作成の方向性は間違っていないといえるでしょう。逆に狙ったキーワードからのアクセスが少ないのであれば、そのキーワードと関連性の高いコンテンツを充実させるなど、手を打たなければなりません。
2.ユーザーのニーズがわかる
not providedの中身を知ることの最も大きなメリットは、最近のSEOにとって欠かせない「コンテンツの充実」に役立つということです。検索キーワードの情報には、ユーザーのニーズを知る手がかりがあります。ユーザーは何を欲しているのか、またどのような問題を解決したいのか、サイトにアクセスしている動機を知ることができるのです。そして、現在の検索エンジンは、ページがユーザーのニーズに十分に答えているかどうかでページの価値を測ります。つまり、検索キーワードとの関連性が高く、ユーザーの知りたいことを提供できるページを作ることこそが現在のSEOです。
このコンテンツSEOをおこなっていくためには、ユーザーのニーズを知るための最も有効な検索キーワードが重要です。これがわかれば、より多くのアクセスを獲得するために、既存のコンテンツをどのようにリライトしていけばよいのかもわかります。リライトによって前よりも一層ユーザーのニーズに応えることができれば、検索エンジンからの評価は高まり検索順位は上昇します。検索キーワードを確認しながらコンテンツをブラッシュアップしていくことはコンテンツSEOの時代には欠かせないことです。
not providedの中身を調べる方法
現在Googleアナリティクスの検索クエリデータを見ても、その多くがnot providedとなっています。しかし、not providedの中身は、検索順位を改善しアクセスを増やすうえで非常に重要な情報ですから、何とかして知りたいところです。そこで、not providedによって隠されてしまっている検索キーワードを調べる方法について説明します。
1.Googleアナリティクスで調べる
最初の方法は、Googleアナリティクスに表示されているランディングページから推測するというものです。ランディングページとは、サイトを訪問したユーザーが、最初にアクセスしたページのことを指します。検索エンジンからのアクセスのランディングページを知ることができれば、そのページの内容から検索キーワードを推測できるわけです。
ランディングページを調べるためには、Googleアナリティクスの「集客」から「キャンペーン」を選択します。次に、「オーガニック検索キーワード」を選択すると、not providedを筆頭にキーワードが並んでいるはずです。次に「セカンダリ ディメンション」から「行動」の中の「ランディング ページ」を選択すると、ランディングページの一覧が表示されます。このランディングページのタイトルに含まれている言葉を見れば、検索キーワードをある程度予測できるわけです。例えば、「A」というキーワードが含まれているページが上位に並んでいれば、検索キーワードの上位も「A」だろうと推測がつきます。ただし、これはあくまでも予測であり正確なものではありません。この方法は、キーワードの傾向をおおまかに把握するためのものだと考えておきましょう。
2.Googleサーチコンソールで調べる
Googleサーチコンソールで検索キーワードを調べ、not providedで隠されている情報を知ることも可能です。その方法は、まずGoogleサーチコンソールにログインし、「検索パフォーマンス」をクリックします。このデータを「ページ」でフィルタすると、各ページへの流入キーワードを知ることができるます。この方法は、not providedで見えなくなった検索キーワードを知る最も有効な方法です。
このデータでは、「クリック数」や「表示回数」の他に、「CTR」や「掲載順位」を知ることもできるので、ページ修正のヒントをたくさん得て改善していくことができます。例えば、CTRを確認しながら、クリック率を上げるためにtitleタグやdescriptionタグを修正するなどです。このようにGoogleサーチコンソールはSEO上の重要なデータを提供してくれますが、難点が2つあります。1つ目は、Google検索からアクセスしてきたユーザーのデータしかわからないことです。ただ、Google検索とYahoo!検索とでユーザーの傾向が大幅に異なることはあまり多くないため、あまり気にする必要はないでしょう。もう1つの難点は、検索クエリのデータが過去3ヵ月分しか保存されていないことです。面倒ですが、データをこまめにダウンロードして保存しておくしかありません。
3.ツールで調べる
キーワードツールやWEBサイト分析ツールなどを使って、流入キーワードを調べる方法もあります。キーワードツールは、どのようなキーワードを選定して対策すればよいのか、現状の流入キーワードは何かなどを調べてくれるツールです。代表的なものとしては、Googleキーワードプランナー、Yahoo!JAPANのキーワードアドバイスツール、キーワードファインダーなどがあります。また、URLを入力するだけでサイトへのアクセス数などを表示するSimilarWebも、流入の多い検索キーワードを表示してくれる便利なツールです。ただし、これらのツールのなかには、有料ユーザーにならないと十分に機能を使えないものもあるため、ツール導入が本当に必要なのかどうか慎重に考える必要もあるでしょう。
4.サイト内検索で傾向を見る
サイト内検索で使われたキーワードも流入キーワードを推測する手がかりになります。そのキーワードはユーザーのニーズを満たすものです。サイト内検索でのキーワードはGoogleアナリティクスで確認することができ、「行動」、「サイト内検索」とプルダウンすると「サイト内検索キーワード」が出てきます。ただ、この方法は、ユーザーがサイト内検索をあまり使っていない場合には役に立ちません。数少ないデータでは判断せず、ある程度データが蓄積されてから判断するようにしましょう。
5.リスティング広告の検索クエリで把握する
リスティング広告を配信している場合は、その広告データの中からの検索キーワードを知ることができます。リスティング広告は検索エンジンでのキーワードに連動して関連広告を表示するシステムであり、キーワードは重要なデータです。例えば、Google広告の場合、メニューの「キーワード」から「検索語句」を選ぶと、どのようなキーワードで広告がクリックされているのかを確認することができます。この方法では、リスティング広告がクリックされたキーワードがわかるだけであり、ダイレクトにnot providedの中身を知ることができるわけではありません。しかし、リスティング広告でクリックにつながるキーワードは、検索流入につながるだろうという推測は成り立ちます。
検索キーワードの活用方法
not providedの中身を調べたら、検索キーワードを活用してサイトへのアクセス増加のための対策をおこないましょう。検索エンジン最適化(SEO)をおこなううえで重要なデータを入手できたのですから打つ手はたくさんあります。今回は、その中でも代表的な3つの活用方法を紹介していきましょう。
1.ターゲットがサイトに流入しているか確認
ユーザーがサイトにどのようなキーワードでアクセスしているのかを知れば、狙い通りのターゲットがサイトにアクセスしているのかどうか確認できます。例えばば、低価格で勝負している商品のページであれば、キーワードのなかに「安い」や「最安」などのキーワードが含まれているはずです。このようなキーワードがない場合は、安さで訴求するマーケティングは成功していないことになります。このように、検索キーワードと当初の狙いを比較することで、ターゲット選定やサイト作成の方向性が正しいのかどうかを知ることができます。
2.キーワードをもとにコンテンツを作る
現在のSEOでは、ページがユーザーに役立つコンテンツを提供しているかどうかが重要な評価基準となっています。ページにアクセスしたユーザーが、その意図通りに知りたい情報を入手でき、解決したい問題を解決できるようなコンテンツを提供しているページほど、よいページであると判断されます。したがって、検索キーワードからユーザーのニーズを正しく把握し、そのニーズに合ったコンテンツを提供できるように、何度もページをあらためていく必要があります。
当初想定していたキーワードとは異なるキーワードでのアクセスが多い場合は、コンテンツ作成の方向性が誤っているのではなく、気付けなかったユーザーのニーズを発見しているような場合もあります。その場合は、そのキーワードに関連するコンテンツをボリュームアップし、より一層のニーズ掘り起こしをしてみるという選択肢もあるでしょう。このようなコンテンツSEOに役立つことこそが、検索キーワードを知る最も大きな価値だということができます。
3.リスティング広告のキーワードとして活用
検索キーワードがわかれば、それをリスティング広告のキーワードとして使うこともできます。ユーザーのニーズが高ければ広告をクリックされる可能性も高くなるからです。ただし、リスティング広告は単にクリックされ、アクセスを稼げればよいわけではありません。問い合わせや購入などのコンバージョンにつながらなければ意味がないのです。コンバージョンにつながらないクリックは広告費の無駄です。したがって、検索キーワードをそのままリスティング広告のキーワードにするのではなく、それらの中からコンバージョンにつながるものを厳選することが大切です。
not providedを分析して有益なキーワードを見つけよう
Googleアナリティクスで多く見かけるようになったnot providedは、そのまま放置しておくと単に「検索キーワードが不明」という意味にしかなりません。
しかし、さまざまな方法を駆使してnot providedの中身を調べ、検索キーワードを知ることができれば、有効なSEO対策に結びつけることができます。特に現在の主流であるコンテンツSEOをおこなっていくためには、not providedの分析による流入キーワードの調査が不可欠なのです。