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LTV(ライフタイムバリュー)とは?設定方法や活用法を解説

編集部
2024.12.16更新
2024.11.19初出
LTV(ライフタイムバリュー)とは?設定方法や活用法を解説

企業の収益性を評価するうえで、近年特に注目を集めているのが「LTV」(ライフタイムバリュー・顧客生涯価値)という指標です。これは、一人の顧客が取引開始から終了までの期間で、企業にもたらす経済的価値を総合的に評価するものです。

現代のビジネス環境では新規顧客の獲得がますます困難になっており、企業は既存顧客との関係性を深め、長期的な取引関係を構築することに注力しています。このような状況下で、LTVは企業の持続的な成長を実現するための重要な指標として、その重要性を増しています。

本記事では、LTVについて、概要やメリット、計算方法や知っておきたい指標などを解説します。ぜひ、参考にしてみてください。

LTV(ライフタイムバリュー)とは

LTV ライフタイムバリュー

LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)は、一人の顧客が企業との取引を開始してから終了するまでの期間で、企業にもたらす経済的価値を総合的に評価する指標です。この数値は、単なる購買金額の累計だけでなく、その顧客との取引関係の強さや持続性を反映するものとなっています。

LTVの高い顧客は、企業との間に強い信頼関係を築いていることを示唆しており、企業のブランドや提供する価値に対して深い共感を持っていると考えられるでしょう。

こうした特徴から、LTVは顧客との関係性の質を測る決定的な指標として広く活用されています。

LTVが注視される理由と背景

LTVが注視される理由と背景には、次の3点が挙げられます。

  • 新規顧客の獲得が難しくなった
  • 既存ユーザーのロイヤリティを測る必要性がでてきた
  • サブスクリプションサービスが増加した

それぞれ解説します。

新規顧客の獲得が難しくなった

現代のビジネス環境においては、多くの市場で競争が激化し、サービスの供給が需要を上回る飽和状態となっています。このような状況下では、新たな顧客の開拓が極めて困難であり、企業は既存の顧客基盤を大切にし、その価値を最大化することに注力する必要があります。

また、マーケティングコストの観点から見て、新規顧客の獲得には既存顧客の維持管理と比較して約5倍もの投資が必要とされる点も懸念点です。このため、企業は既存顧客との取引関係を深め、より高額な商品やサービスへの移行を促すアップセルや、関連商品の購入を提案するクロスセルなどの施策を重視しています。

このような既存顧客に焦点を当てたアプローチが、効率的な事業成長の鍵となっているといえます。

既存ユーザーのロイヤリティを測る必要性がでてきた

既存ユーザーのロイヤリティを測る必要性がでてきたことも、LTVが注視される理由です。消費者が特定のブランドや商品に対して抱く信頼感や結びつきを表す概念を「顧客ロイヤリティ」といいます。

顧客ロイヤリティを持った顧客のことを「ロイヤルカスタマー」と呼び、単に製品やサービスを定期的に利用するだけでなく、ブランドの良さを自発的に周囲に広めてくれる役割も果たす存在です。ロイヤルカスタマーは競合商品への乗り換えを検討することが少ないため、企業にとって安定した収益源となるのがメリットといえるでしょう。

顧客との関係性の深さを定量的に評価する手法として、LTVが重要視されています。

サブスクリプションサービスが増加した

ビジネスモデルは大きな転換期を迎えており、一度きりの商品販売から定期定額制のサブスクリプション方式へと進化しています。「サブスクリプションサービス」は、月額や年額などの固定料金を支払うことで、継続的にサービスへのアクセスが可能となるサービスです。

このビジネスモデルの特徴は、安定した収益が見込める反面、顧客がいつでもサービスの利用を中止したり、競合サービスへ移行したりする自由を持っている点です。そのため、企業は顧客満足度の向上や独自の価値提供など、サービスの継続利用を促すさまざまな取り組みを積極的に展開しています。

このような状況において、LTVは顧客との長期的な関係性がもたらす事業価値を評価する指標として、その重要性を増しているといえるでしょう。

LTVを算出するメリット

LTV ライフタイムバリュー メリット

LTVを算出するメリットとして挙げられるのは、下記の3点です。

  • ユーザー一人ひとりのニーズを把握できる
  • コストの浪費を抑えられる
  • 収益構造の把握・分析ができるようになる

それぞれ解説します。

ユーザー一人ひとりのニーズを把握できる

LTV分析を通じて、ユーザーの詳細な購買パターンやサービス利用履歴の把握いえるが可能になります。これにより、それぞれのユーザーに最適化されたマーケティング施策を展開できるのがメリットです。

特に既存ユーザーの行動分析は、新規顧客の開拓よりも効率的な事業成長をもたらすため、多くの企業が注力しています。個々のニーズに応じたアップセルやクロスセルの機会を特定することで、より効果的な収益拡大が実現できます。

コストの浪費を抑えられる

LTV分析によって顧客獲得や維持にかかる費用の詳細な把握が可能となり、投資対効果を正確に測定できるようになります。

また、顧客の購買傾向を理解し、ターゲットを絞った効率的なプロモーション活動をおこなうことで、マーケティングコストの最適化にもつながるでしょう。

さらに、既存ユーザーからのフィードバックは製品開発や販売戦略の改善に活用でき、結果として新規顧客の獲得コストの削減にも役立ちます。

収益構造の把握・分析ができるようになる

LTV分析を活用することで、製品やサービスごとの収益性や利用状況、売上構造の関連性を明確に把握できるようになります。この分析により、自社ビジネスの課題が特定され、より効果的な経営判断が可能となります。

また、製造コストやマーケティング費用と売上の関係を詳しく分析すれば、収益性向上のための具体的な施策立案にも役立つでしょう。

さらに、顧客の利用傾向を的確に把握することで、市場ニーズに合った商品開発や既存サービスの改善にも活用できます。

LTVの計算方法

LTV ライフタイムバリュー 計算方法

LTVの計算方法は、下記のシンプルな数式で表せます。

LTV = 顧客単価 × 粗利益率 × 年間購買頻度 × 取引継続年数

この計算式を実際のビジネスケースに当てはめてみましょう。

例えば、以下のような条件で考えてみます。

  • 商品単価:20,000円
  • 粗利益率:25%
  • 購入頻度:2ヵ月に1回(年間6回)
  • 顧客との取引期間:4年

この場合、LTVは「20,000円×0.25×6×4」と計算され、120,000円となります。

ただし、これは理論上の数値であり、実際のビジネスでは顧客獲得コストや維持管理コストなどを考慮する必要があります。

これらのコストを差し引くことで、より現実的なLTV値の算出が可能です。

LTVに関する指標・用語

LTV ライフタイムバリュー 指標 用語

LTVに関する指標や用語には、次のようなものがあります。

  • ARPA・ARPU
  • CAC・ユニットエコノミクス
  • MQL・SQL
  • チャーンレート・リテンションレート

それぞれ解説します。

ARPA・ARPU

「ARPA(Average Revenue Per Account)」は、各アカウントがもたらす平均収益を表す重要な経営指標です。

計算式は、次のようになります。

ARPA = 総売上高 ÷ アカウント総数

具体例を挙げると、月間売上高が2,000万円で利用アカウント数が400の場合、ARPAは50,000円となります。この指標は、LTV計算の重要な要素の「平均購入単価」をアカウントレベルで把握する際に特に有用です。

ただし、ARPAと「ARPU(Average Revenue Per User)」の違いを正確に理解することが重要です。ARPUが個別の利用者単位での平均収益を示すのに対し、ARPAはアカウント単位での測定をおこないます。

この区別が必要となった背景に、一つのアカウントを企業内の複数メンバーで共有したり、家族間で異なるデバイスから利用したりするサブスクリプションモデルの存在が挙げられます。

そのため、企業は自社のビジネスモデルや提供するサービスの特性に応じて、ARPAとARPUのどちらがより適切な指標となるかを見極める必要があるでしょう。

CAC・ユニットエコノミクス

CAC(Customer Acquisition Cost)は、企業が新たな顧客を獲得するために投じる費用を数値化した経営指標です。顧客獲得に関連する広告費、営業活動費、マーケティング費用などの総額を、獲得した新規顧客数で割ることで算出されます。

一方、ユニットエコノミクスは、個々の顧客との取引がもたらす収益性を評価する指標として活用されています。特に定期収入型のビジネスモデルであるSaaSや、サブスクリプションサービスで重要視されており、この数値が良好な水準を維持していれば、事業の健全性と持続可能性を示しているといえるでしょう。

MQL・SQL

「MQL(Marketing Qualified Lead)」とは、さまざまなマーケティング施策を通じて獲得した見込み顧客のなかで、特に優良な潜在顧客として識別された層を指します。この層は、商品やサービスへの関心度が高く、施策への反応が良好なのが特徴です。

MQLのなかでも、さらに商談や成約の可能性が高いと判断された見込み顧客は「SQL(Sales Qualified Lead)」として分類され、営業部門による直接的なアプローチの対象となっています。

このようにMQLからSQLへと段階的に見込み顧客を選別し、それぞれに適切なアプローチをおこなうことで、より確実な成約と長期的な取引関係の構築が可能です。

チャーンレート・リテンションレート

チャーンレートは、サービスから離脱する顧客の割合を示す指標です。サブスクリプションビジネスにおいては、顧客との長期的な関係維持が収益の基盤となるため、このチャーンレートの低減が経営における重要な課題となっています。

一方、リテンションレートは顧客の定着率を表す指標で、サービスを継続して利用している顧客の比率を示します。リテンションレートはチャーンレートと表裏一体の関係にあり、向上させることで安定的な収益確保と事業の持続的成長につながります。

LTVを向上させるためにすべきこと

LTV ライフタイムバリュー 向上させる ポイント

LTVを向上させるためには、次の4点をおこなうことが重要です。

  • 購入単価を上げる
  • 購買頻度を上げる
  • 長期間の継続利用を促す
  • コストを抑えて利益率を上げる

それぞれ解説します。

購入単価を上げる

LTVを向上させるには、商品価格を見直して購入単価を上げることが必要です。そのため、価格改定を検討する際は、顧客が自社製品を選択する本質的な理由を深く理解しておかなければいけません。

もし価格以外の要因、例えば品質や独自の価値提供が購買決定の主な理由な場合、適度な価格調整は顧客維持率に大きな影響を与えない可能性が高いです。

また、顧客単価を向上させる戦略として、2つの重要なアプローチがあります。一つは「アップセル」で、既存顧客により上位グレードや新しいバージョンの製品への移行を促す方法です。もう一つは「クロスセル」で、顧客がすでに購入した製品に関連する商品やサービスを追加で提案し、購入を促進する方法です。

これらの戦略を効果的に組み合わせることで、顧客満足度を維持しながら取引額を増加できます。

購買頻度を上げる

購買頻度を上げることも、LTV向上に効果的です。顧客の購買頻度を上げるには、タイミングを考慮した効果的なコミュニケーション戦略が重要です。

例えば、商品の使用サイクルや買い替え時期を分析し、適切なタイミングでメールによる情報提供をおこなうことで、購入検討のきっかけを作れます。

こういった情報発信では、単なる商品案内にとどまらず、自社製品やサービスの独自の価値や優位性を明確に伝えるとよいでしょう。競合との差別化ポイントを具体的に示せば、顧客の選択肢として自社製品が優先的に検討される可能性が高まります。

長期間の継続利用を促す

顧客との取引関係が長期化するほど、LTVは向上していきます。そのため重要なのは、単発の販売にとどまらず、顧客との継続的な関係構築に注力することです。顧客に深い信頼と愛着を持ってもらい、ブランドの擁護者となるロイヤルカスタマーへと育成していく視点が必要です。

特にサブスクリプション型のビジネスモデルでは、顧客との強固な信頼関係の構築が事業の成功を左右する重要な要素となります。顧客満足度が低い場合、解約や競合サービスへの流出などのリスクが高まるためです。

製品やサービスの品質向上はもちろん、きめ細やかなサポートや付加価値の提供を通じて、顧客ロイヤリティを継続的に高めていく施策が不可欠です。

コストを抑えて利益率を上げる

LTVの最大化を実現するためには、売上の向上だけでなく、収益性の改善も重要な要素となります。いくら高額な商品やサービスを提供していても、その背後にある製造コストや運営費用が膨らんでしまっては、実質的な収益は限定的なものとなるからです。

そのため、製造プロセスの効率化やサービス提供体制の最適化を通じて、コスト構造を見直していく必要があります。

また、業務プロセスの自動化や効率的なリソース配分により、運営コストを適切にコントロールすることで、より健全な利益率の確保が可能です。

まとめ

LTV ライフタイムバリュー 概要 メリット 計算方法 ポイント

LTVは、顧客との長期的な関係性を数値化し、事業の健全性を評価する指標です。市場競争が激化する現代において、新規顧客の獲得が困難になる中、既存顧客との関係強化がますます重要となっています。

LTVを向上させるためには、購入単価や購買頻度の向上、継続利用の促進、そしてコスト最適化による収益性の改善など、多角的なアプローチが必要です。

これらの施策を効果的に組み合わせることで、持続可能な事業成長の実現が可能となるでしょう。

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