WEBサイトの集客は一定の成果を上げているものの、コンバージョン率の向上が課題となっている方も多いのではないでしょうか。コンバージョンに影響する要因を把握し、的確なサイト改善につなげるには、ユーザーの行動が可視化できるヒートマップの活用がおすすめです。
そこで今回は、ヒートマップの特徴やメリットから、見るべき分析ポイント、おすすめツールまで詳しく解説します。ぜひ参考にしてみてください。
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ヒートマップとは
「ヒートマップ」とは、数値データを色合いや濃淡によって視覚化したグラフのことです。金融や不動産などさまざまな分野で活用されていますが、WEBサイトの運営でも、ユーザーの行動を分析するツールとして役立ちます。
例えば、ページ上で多くのユーザーから熱心に見られている箇所は赤く示され、あまり注目されていない部分は青味を帯びて表示されます。こうした視覚化によってサイトの課題が見えてくるため、改善策を講じることができます。
ヒートマップの機能
ヒートマップには主に3つの機能があり、活用目的に応じて使い分ける必要があります。可視化したいデータの種類やサイトで改善を図りたい点に合わせて、適切なヒートマップ機能を選択することが重要です。
3つの機能は下記のとおりです。
- 熟読エリアの分析
- 終了エリアの分析
- クリックエリアの分析
またこれらに加え、近年では「スマートフォン操作の分析」も欠かせません。
それぞれの機能について詳しく説明します。
熟読エリアの分析
ユーザーから熱心に閲覧されている箇所が「熟読エリア」です。ヒートマップではこの熟読エリアが赤色で可視化されており、その色の濃さが濃いほどユーザーの関心度が高いことを意味します。
一方、緑色や青色に近づくにつれて、あまり注目されていない場所であることがわかります。
終了エリアの分析
終了エリアは、サイトを訪問したユーザーがページを離れた箇所です。終了エリアに示された数値と画像は、そのページに残り続けたユーザーの割合、つまり「維持率」を表しています。
クリックエリアの分析
「クリックエリア」が示すのは、ユーザーが特に関心を寄せている箇所です。ユーザーがページ上のどの場所にマウスやタップの操作をおこなっているかを◯などで可視化できるようになっています。
スマートフォン操作の分析
スマートフォンユーザーのWEBページ操作を分析する際には、「タッチアクションヒートマップ」が役立ちます。このヒートマップでは、タップやスワイプなどの一般的な操作に加え、スマートフォン特有のフリックやピンチイン・ピンチアウト動作の可視化が可能です。
近年ではスマートフォンからの訪問が大半を占めるサイトも多いため、ユーザーのコンテンツ認知を適切に分析する必要があります。従来のヒートマップとタッチアクションヒートマップを併用することで、注目されるコンテンツを異なる視点から評価できます。
ヒートマップのメリットとデメリット
ヒートマップにはメリットがある一方、デメリットもあります。ここでは、ヒートマップのメリット・デメリットをそれぞれ紹介しましょう。
ヒートマップのメリット
ヒートマップのメリットは次の2つです。
- ユーザーの動きを客観的に把握できる
- コンバージョン地点のユーザー行動も把握できる
それぞれ解説します。
ユーザーの動きを客観的に把握できる
ヒートマップは、色や濃淡によってユーザーの行動を視覚的に表現するため、ユーザーの動きを直感的かつ客観的に把握できます。ヒートマップによる可視化データは、ユーザーの実際の行動にもとづいた客観的な情報であり、主観に左右されないのが特徴です。
そのため、WEBサイト運営者の思い込みや勘に頼ることなく、訪問ユーザーの実際の動きを正しく把握することが可能です。
コンバージョン地点のユーザー行動も把握できる
ヒートマップでは、WEBページ上のコンバージョン地点、つまりコンバージョンに直結する重要な箇所のユーザー行動を可視化し、把握できます。
例えば、商品購入サイトであれば購入手続きページでのユーザー動線を確認でき、その分析結果をもとにコンバージョン改善の施策を立てられます。
このようにコンバージョン地点のユーザー行動を詳細に把握できるのが、ヒートマップの大きな強みです。
ヒートマップのデメリット
一方、ヒートマップのデメリットは次の2つです。
- WEBサイト全体を把握することはできない
- 可視化できるのはあくまでユーザー行動のみ
それぞれ解説します。
WEBサイト全体を把握することはできない
ヒートマップは、特定のページ内でのユーザー行動のみを可視化するツールです。
そのため、ページの具体的な箇所のユーザー行動の分析には役立ちますが、WEBサイト全体を把握して分析することはできません。
WEBサイト全体の問題点を把握するには、他の解析ツールとの併用が必要となります。
可視化できるのはあくまでユーザー行動のみ
ヒートマップで可視化できるのは、あくまでも訪問したユーザーの行動のみです。WEBサイトやページ自体の内容や構造については、ヒートマップからは把握することができません。
そのため、ヒートマップによる分析結果をもとに改善策を立てる際は、WEBサイトやページの内容や構造も合わせて検討する必要があります。
ヒートマップはユーザー行動を可視化するためのツールに過ぎず、WEBサイトを改善する手段ではない点に注意しましょう。
ヒートマップを利用する際の基本的な流れ
それでは、ヒートマップはどのように利用するのでしょうか。
ヒートマップを利用する場合の基本的な流れは、下記のとおりです。
- 利用申し込みをする
- 計測タグを分析したいページに設置する
- データが蓄積されるのを待つ
- ツールの機能でユーザー行動を分析する
- 数値やユーザー行動をもとに改善案を立てる
- 施策を実行し再びデータが蓄積されるのを待つ
- 再度ヒートマップ分析をおこない施策の効果検証をする
それぞれ解説します。
1.利用申し込みをする
ヒートマップを利用するには、ヒートマップツールの利用申し込みが必要です。さまざまなヒートマップツールが提供されているので、自社のニーズや予算に合ったツールを選択することが重要です。利用申し込みの際は、必要となる情報を入力し、手続きを完了させましょう。
2.計測タグを分析したいページに設置する
利用申し込みのあとは、ツール提供元から受け取った計測タグを分析対象ページに設置する作業に移ります。計測タグは、ユーザー行動を記録するために必要です。分析対象のページすべてにタグを設置することで、サイト全体のデータを蓄積できます。
3.データが蓄積されるのを待つ
計測タグの設定後は、一定時間データが蓄積されるのを待ちます。十分な数のユーザー行動データが集まらない限り、適切な分析ができません。データ蓄積に必要な時間はツールやサイトの規模によって異なりますが、1時間程度が目安です。
4.ツールの機能でユーザー行動を分析する
十分なデータが蓄積されれば、ヒートマップツールの機能を使ってユーザー行動の可視化と分析が可能になります。クリック動線やスクロール行動、マウス動作などさまざまな角度からデータを確認し、サイトの課題を探りましょう。
5.数値やユーザー行動をもとに改善案を立てる
ヒートマップ分析で明らかになった数値やユーザー行動をもとに、どのようにWEBサイトを改善するか、具体的な施策案を立てます。改善が必要な箇所をリストアップし、対策方針とその実行計画を策定するとよいでしょう。
6.施策を実行し再びデータが蓄積されるのを待つ
改善施策を実際のWEBサイトに反映させたあとは、再びデータが蓄積されるのを待ちます。これにより、施策前後のユーザー行動を比較し、施策の効果を検証できます。
7.再度ヒートマップ分析をおこない施策の効果検証をする
十分なデータが蓄積されたら、再びヒートマップツールでユーザー行動の分析をおこないましょう。この場合、施策実施前のデータと比較しながら改善の成果を検証するのがポイントです。また、課題が残るときは、更なる施策を検討する必要があります。このように施策とデータ分析を繰り返すことで、継続的にWEBサイトを最適化していきます。
ヒートマップ分析で見るべき4つのポイント
ヒートマップ分析の際は、次の4つのポイントを押さえて確認すると効率的です。
- ファーストビューの分析をおこなう
- 熟読エリアの分析をおこなう
- 終了エリアの分析をおこなう
- クリックエリアの分析をおこなう
それぞれ解説します。
ファーストビューの分析をおこなう
ヒートマップ分析が初めての場合、まずWEBページの最初に表示される上部エリア、いわゆる「ファーストビュー」の分析から始めることをおすすめします。
ファーストビューはユーザーが最初に接する場所であり、その内容次第でコンバージョン率に大きな影響を及ぼすことがあるためです。訪問したユーザーの多くがこのエリアの内容をもとにサイトを閲覧し続けるか判断しています。そのため、しっかり分析することが重要です。
熟読エリアの分析をおこなう
熟読エリアの分析も欠かせないポイントの一つです。熟読エリアの適切な分析には、「熟読されるべき箇所が読まれていないエリア」と「想定外の熟読があるエリア」の2点を確認することが重要です。
前者については、コンテンツがユーザーから理解されにくい、またはニーズとマッチしていない可能性があるため、コンテンツの見直しやデザインの改修が求められます。その際は大規模な変更ではなく、課題箇所に絞ってABテストを繰り返し、ヒートマップでその効果を検証するとよいでしょう。
一方、思いがけず熟読されているエリアがあれば、そこがユーザーの実際の関心事である可能性が高く、よりわかりやすい位置への配置転換などの最適化が必要となります。
終了エリアの分析をおこなう
終了エリアの分析では、多数のユーザーが離脱している箇所とコンバージョン地点の前後の2箇所に着目するのがポイントです。LPのように明示的にユーザーのアクションを求めるページの場合、コンバージョン地点の手前で離脱が起きれば大きな機会損失につながります。
例えば、申し込みボタンや購入ボタンの直前で多くのユーザーが離脱しているケースでは、ボタンの配置を変更するなどの改修が求められます。また、ページの滞在時間を延ばしたい場合、ファーストビューで離脱が起きていれば、記事全体の構成やデザインを見直す必要があるかもしれません。
一方、終了エリアがユーザーの行動箇所よりも下流にあれば、適切にアクションを促せていると判断できます。
クリックエリアの分析をおこなう
クリックエリアの分析では、本来クリックを想定していない場所でユーザーのクリックが集中していないかをチェックすることが重要です。申し込みボタンや購入ボタンのように、クリックが期待される箇所で多くのクリックがあれば問題ありません。
しかし、無意味な場所でクリック数が目立つ場合、デザインがユーザーを混乱させている可能性が高いです。適切な操作を促すためにも、よりわかりやすいデザインへの変更が必要です。
ヒートマップ分析におすすめのツール7選
ここでは、ヒートマップ分析におすすめのツールを7つ紹介します。
KAIZEN UX
「KAIZEN UX」は、ヒートマップ分析で明らかになった改善ポイントをすぐさまデザインへ反映可能なツール・サービスです。デザインエディター機能を備えているため、分析結果を直接デザイン改修に生かすことができます。
さらに、アナリティクス機能も搭載されており、他社ツールを連携させる手間なく、サイト全体の成果を一元的に可視化できます。
ヒートマップによる課題の発見、デザイン改修を通じた改善施策の実行、その効果の測定までを一貫してサポートするのが「KAIZEN UX」の大きな特徴です。
参考元:KAIZEN UX
User Heat
ユーザーローカル社が提供する「User Heat」は、基本的なヒートマップ分析機能を備えたツールです。熟読エリアや終了エリア、クリックエリアなどの分析が可能で、月間30万PVまでなら無料で利用できるのが最大の魅力です。使い方も簡単で、分析対象サイトのURLを入力するだけでヒートマップ分析がスタートできます。
また、PCユーザーに加え、スマートフォンユーザーの行動も分析の対象です。コスト面で不安のある企業やヒートマップ分析の導入を検討している企業には、最適のツールといえるでしょう。
参考元:User Heat
User Insight
「User Insight」は、基本的なヒートマップ機能に加え、ユーザーの年齢や性別、インターネット利用頻度を推測する属性解析機能を搭載したツールです。「User Heat」と同様のユーザーローカル社が提供しており、すでに多くの企業に導入実績があります。
このツールでは、LPだけでなく、メディアやECサイト、広告、SaaSやBtoBなど、さまざまな分野やターゲットに特化した分析が可能です。そのため、「User Heat」よりも踏み込んだ分析をおこないたい企業や、自社に合ったヒートマップツールを求める企業におすすめです。
参考元:User Insight
Content Analytics
「Content Analytics」は、細かいフィルタリング機能を駆使して詳細な分析が可能なヒートマップ分析ツールです。
例えば、コンバージョンを達成したユーザーのみ、新たに訪れたユーザーのみ、またはリピーターのみの動きを個別に調査できます。ユーザーの特性や行動に応じてデータを視覚化できるため、より有効な改善策を策定するのに便利です。
また、他のツールとの統合機能を備えており、CX(顧客体験)プラットフォームである「KARTE」と統合することで、行動データをもとにユーザーを分け、それぞれのセグメントに対応したヒートマップを用いて関心のあるコンテンツを特定できます。
ミエルカヒートマップ
「ミエルカヒートマップ」は、株式会社Faber Companyが提供するヒートマップ分析ツールです。このツールの特徴は、標準のヒートマップ機能に加えて、特別な「集客改善キーワード提案機能」が備わっている点です。
「集客改善キーワード提案機能」では、Google Search Consoleと連携することで、ページの改善に重点を置くべきキーワードを毎月自動的に提案してくれるため、特に集客の課題を持つ場合に便利です。
さらに、利用可能なプランは個々のニーズに合わせて多岐にわたり、フリーランスや小規模チーム、制作会社や代理店、大規模サイトの運営チームなど、さまざまな規模の組織やプロジェクトに適応するように設計されています。費用対効果を考慮して最適なプランを選択し、必要に応じて改善提案を受けることも可能です。
参考元:ミエルカヒートマップ
SiTest
「SiTest」は、株式会社グラッドキューブが提供するヒートマップ分析ツールです。このツールは、ヒートマップによるユーザー行動の可視化はもちろん、A/Bテストやエントリーフォームの最適化(EFO)、包括的なレポート生成機能などを備えており、WEBサイトの分析や改善プロセスを統合的におこなうことが可能です。
ユーザーのサイト訪問から、CTAボタンのクリック、フォーム記入の完了に至るまでのプロセスを詳細に分析し、コンバージョン率の最適化に貢献します。
また、単なる利用にとどまらず、専門的なコンサルティングサービスを提供するプランも選択できます。ヒートマップ機能など主要機能の体験を希望する方向けに無料トライアルもあり、気軽に試すことも可能です。
参考元:SiTest
Ptengine
「Ptengine」は、株式会社Ptmindから提供されるヒートマップ分析のためのツールです。このツールは、サイトに単一のタグを挿入することで、ヒートマップによる分析を可能にします。
また、ページの修正やA/Bテストをコードを書かずに実施できる機能を備えているため、コーディングが苦手な方や予算の制約がある企業にとっても使いやすいといえますい。
さらに、WEB上での接客やコンテンツのパーソナライズに関しても、ユーザーの特性や行動に基づいた最適なタイトルや画像、メッセージを自動的に配置するなど、多彩な機能を提供します。
参考元:Ptengine
まとめ
ヒートマップとは、数値データを色合いや濃淡によって視覚化したグラフのことで、活用することでユーザーの行動を効率的に分析できます。機能には主に、「熟読エリア」「終了エリア」「クリックエリア」の3つの分析があり、近年では「スマートフォン操作」の分析も欠かせないものとなっています。
また、ヒートマップを利用する際は、メリット・デメリットそれぞれを理解しておくことが重要です。今回の記事を参考に、ヒートマップツールを活用し、サイト改善に役立ててみてはいかがでしょうか。