YouTube広告を運用する場合、広告効果の検証が欠かせません。そこで活用できるのが「ブランドリフト調査」です。ブランドリフト調査では、ブランディング広告の効果測定を効率的におこなうことができます。
今回は、YouTubeのブランドリフト調査の概要と設定方法を解説し、実施の際の注意点なども紹介します。YouTubeのブランドリフト調査を理解したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
ブランドリフト調査とは
ブランドリフト調査(Brand Lift Sarvey)は、広告の接触者と非接触者を比較し、ブランドへの反応の違いを検証する調査です。商品・サービスの認知度や好感度、購買意欲の差を調べることで、ブランディングを目的とした広告の成果指標となります。
また、YouTube 広告でのブランドリフト調査は、次のような広告枠に表示される短いアンケートでおこなわれます。
ブランドリフト調査では、主に次の5つの観点からの調査が可能です。
- 広告想起:「このうち、最近オンラインで広告を見たブランドは?」(複数回答)
- 認知度:「このなかで知っているブランドは?」(複数回答)
- 比較検討:「ブランドを利用するなら、この中のどれを検討する?」(複数回答)
- 好感度:「このなかで好きなブランドは?」(複数回答)
- 購入意向:「このなかでもっとも購入したいものは?」(単一回答)
例えば、認知度を調査する場合、「次のサービスのうち、知っているものはどれですか?」と質問をし、自社サービス、競合A、競合B、競合C、上記以外の5択から回答してもらいます。
広告接触者で「自社サービスの広告を見た」と回答するユーザーが多ければ、その広告はブランドの認知度に貢献したといえます。
ブランドリフト調査を実施する目的
ブランドリフト調査は、Googleの動画広告キャンペーンの効果を評価することを目的として実施されます。この調査を通じて、一定期間配信されるYouTube広告がどの程度、ユーザーのブランド認知や購入意欲に影響を与えるかを把握できます。
この分析結果を利用して、動画の内容やターゲット層の設定など、さまざまな側面から広告の成果を詳細に検証し、今後のキャンペーン戦略に役立てることができます。
サーチリフト調査との違い
Google広告には、ブランドリフト調査の他に「サーチリフト調査」もあります。この調査は、広告がどれほど効果的にキーワード検索を促進しているかがわかる手法です。
広告を見たユーザーは、商品やブランドについてさらに情報を得ようと検索エンジンを利用する傾向があります。そのため、広告の影響を検索行動の増加を通して評価できます。
広告が効果的であれば、その結果、検索流入が増加するはずです。もし広告後の検索流入に顕著な変化がなければ、広告内容の見直しや全く新しいアプローチを検討する必要があるでしょう。
ブランドリフト調査とは異なるタイプの情報が提供されるため、目的に応じてどちらの調査を使うかの選択が重要です。
ブランドリフト調査のメリット
ブランドリフト調査を実施するメリットは、次の2つです。
- インバナーサーベイを活用できる
- ブランディング広告利用時の効果がわかる
それぞれ解説します。
インバナーサーベイを活用できる
ブランドリフト調査では、「インバナーサーベイ」の活用が可能です。インバナーサーベイは、サイトのディスプレイ広告内で直接回答できる短いアンケートです。ユーザーが別のページに移動せずに情報収集が可能となるため、簡単かつ迅速にフィードバックを得ることができます。
インバナーサーベイはユーザーにとって負担が少なく、回答を集めやすいというメリットがありますが、専門の調査ページではないため、回答数が少ない傾向があります。
また、表示領域が小さいことから、ユーザーが誤って選択をしてしまう可能性も高いです。インバナーサーベイを活用する際は、このような特性を理解しておくことが重要です。
ブランディング広告利用時の効果がわかる
自社ブランドの認知度を正確に把握するには、数値だけでは難しい場合があります。
例えば、広告のクリック率を見ても、ブランドイメージがどの程度定着しているか判断しづらいでしょう。ブランディング広告の効果を把握するためには、ユーザーに直接その印象を聞くのが有効です。
広告を実施したあとは、ユーザーが持った印象を集めるブランドリフト調査をおこなうことをおすすめします。
ブランドリフト調査を実施するための条件
ブランドリフト調査を実施するためには、下記の2つの条件が必要です。
- Google広告のアカウント担当者がいる
- 最低出稿額に達している
それぞれ解説します。
Google広告のアカウント担当者がいる
ブランドリフト調査をおこなうためには、Google広告のアカウント担当者を通して依頼・申し込みをする必要があります。
そのため、広告主自身のアカウント、および代理店のGoogle担当者が関わることが必須となります。YouTube広告でブランドリフト調査を実施したい場合は、早めに担当者に連絡を取ることが重要です。
ただし、担当者がいても、すべての場合で調査をおこなえるわけではない点に注意が必要です。
最低出稿額に達している
広告効果を確認するためにブランドリフト調査をおこなうには、ある程度のデータを確保しておくことが求められます。
また、データを集めるには、最低出稿額を決めておく必要があります。
10日間の最低出稿額は、下記のとおりです。
- 質問1個:$15,000 USD
- 質問2個:$30,000 USD
- 質問3個:$60,000 USD
質問数によっても料金が変わりますが、かなり高額となるため実施は慎重に検討しましょう。
ブランドリフト調査の設定方法
ブランドリフト調査の設定は、次の手順でおこないます。
- 広告管理画面の右上のツールと設定をクリックする
- 測定の中からブランド効果測定を選択する
- 新しい商品またはブランドを選択する
- 商品名・ブランド名、開始日、言語を設定する
- ステータスが無効になっていないかを確認する
- 保存して完了
それぞれの手順を紹介します。
1.広告管理画面の右上のツールと設定をクリックする
Google広告管理画面の右上にある「ツールと設定」をクリックします。
2.測定の中からブランド効果測定を選択する
「測定」の中から「ブランド効果測定」を選択します。
3.新しい商品またはブランドを選択する
次に、「ブランド効果測定」から「+」をクリックし、「新しい商品またはブランド」を選択します。
4.商品名・ブランド名、開始日、言語を設定する
商品名またはブランド名を設定し、後で調査を追加する場合に備えて開始日も設定しておきます。
アンケートの言語を設定し、準備したアンケートを追加します。
5.ステータスが無効になっていないかを確認する
対象キャンペーンを設定する際は、「配信中」または「配信前」で、ステータスが「停止」でないものを選ぶことが重要です。
停止のキャンペーンを選択すると調査が「無効」のステータスになり、キャンペーンが正常に配信されていても、調査されない可能性があるためです。調査がスムーズに開始できるよう確認しておきましょう。
6.保存して完了
内容を保存して、ブランドリフト調査の設定を完了します。
ブランドリフト調査の確認方法
ブランドリフト調査を確認する方法は、下記のとおりです。
表示項目をクリックする
表示項目を変更をクリックする
ブランド効果測定から適用を選択する
それぞれについて説明します。
1.表示項目をクリックする
データを確認したい場合は、まず「表示項目」をクリックします。
2.表示項目を変更をクリックする
次に、「表示項目を変更」をクリックします。
3.ブランド効果測定から適用を選択する
「ブランド効果測定」の中から「適用」を選択すると、データの確認ができるようになります。
ブランドリフト調査の注意点
ブランドリフト調査の際、注意すべき点は下記の4つです。
- 実施する前の情報は反映されない
- データが検出されない場合がある
- 一定以上の予算が必要になる
- サーチリフト調査は広告主側で設定できない
それぞれ解説します。
実施する前の情報は反映されない
ブランドリフト調査は、調査を実施した時点でのブランド認知度や好意度などを測定します。キャンペーンが進行中でもブランドリフト調査の開始が可能ですが、実施前の過去のデータはこの調査には反映されない点に注意が必要です。
ブランドリフト調査では、広告を見たユーザーと見ていないユーザーの両方に対してアンケートを実施します。キャンペーンが進行中に調査を開始する場合、すでに広告を見たユーザーに対しても「見ていない」と認識してしまう可能性があります。
キャンペーン全体の影響をより正確に測定するには、キャンペーン開始時から同時にブランドリフト調査を実施するのがおすすめです。
データが検出されない場合がある
ブランドリフト調査では、調査対象ユーザーの回答データを集計して分析します。広告を見たユーザーと見ていないユーザーでアンケート結果の差がない場合は、データが検出されないことがあります。
このようなケースには、ターゲティングや広告のクリエイティブに何らかの問題がある可能性が高いため、見直しが必要です。
また、広告がユーザーに十分な影響を与えていないか、あるいは対象となるユーザーがすでにブランドに対してよい印象を持っている場合、アンケートの成果が出にくいでしょう。
さらに、他の企業の類似した質問が高い反応を得ていると、自社の調査結果に影響を与える可能性も考慮する必要があります。
一定以上の予算が必要になる
ブランドリフト調査を実施するには、一定以上の予算が必要になります。公式サイトでは、この調査を10日間実施する場合、最低でも180万円から200万円程度(※)の費用がかかるとしています。※1ドル:140円換算の場合
上記のように、1日の配信予算として18万円から20万円ほどが必要になり、これを下回ると、ブランドリフト調査が配信されなかったり停止したりします。そのため、調査を実施する際は、必要性を慎重に検討することが重要です。
ブランドリフト調査は、ブランディング広告の成果を効果的に評価するのに役立ちますが、予算が限られている場合、調査結果を活用するための資金が不足してしまうかもしれません。得られたデータを今後の広告戦略に有効に活用するには、現在利用可能な予算を考慮し、最適な調査方法を選ぶ必要があります。
サーチリフト調査は広告主側で設定できない
Google広告では、ブランドリフト調査に加えてサーチリフト調査の利用も可能です。サーチリフト調査は、広告を見たユーザーと見ていないユーザーの間で、オーガニック検索にどの程度の差があるかを調べることができます。
ブランドリフト調査に比べると、サーチリフト調査はユーザーの実際の行動に基づいているため、具体的な成果を明確にとらえやすく、その効果を感じやすいでしょう。
ただし、ブランディングの観点では、ブランドリフト調査よりもサーチリフト調査のほうが複雑で難易度が高く、費用も多くかかる傾向があります。
また、サーチリフト調査では、広告主が直接設定したり結果の確認をおこなうことはできず、すべてGoogle側の担当です。サーチリフト調査をおこないたい場合は、Googleの担当者にブランドリフト調査を依頼する際に同時に相談し、調査のキーワード選定や設定を依頼する必要があります。
まとめ
「ブランドリフト調査」とは、広告の接触者と非接触者を比較してブランドへの反応の違いを検証する調査で、ブランディングを目的とした広告の成果指標です。ブランドリフト調査を利用するとキャンペーンの成果の確認ができ、設定自体も比較的簡単です。
ただし、導入の際は、Google広告のアカウント担当者がいることや、最低出稿額に達しているなどの条件をクリアする必要があります。また、多額の予算もかかるため、慎重に決めることが重要です。
今回の記事を参考に、YouTube広告のブランディングに効果的なブランドリフト調査を検討してみてはいかがでしょうか。